「うちは毎年きちんと健診を実施しているから、安全対策は十分」——そう考えている総務・労
務のご担当者は少なくありません。しかし実際には、転倒や腰痛といった労働災害は、健診結果
とは関係なく起きているケースが多くあります。
一言でいうと、法定の定期健康診断は「病気の早期発見」を目的にした検査であり、筋力・バラ
ンス・柔軟性といった「運動器(体を動かす仕組み)」の機能は評価の対象外です。この記事で
は、そのギャップがどこにあるのかを整理します。
定期健康診断で分かること、分からないこと
労働安全衛生法に基づく定期健康診断では、既往歴や自覚症状の有無の確認、身長・体重・腹囲
・視力・聴力の検査、血圧測定、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査、心
電図検査などが実施されます(対象項目は年齢や業務内容により異なります。詳細は厚生労働省
の公式情報でご確認ください)。これらは主に、生活習慣病をはじめとする疾病の早期発見を目的とした検査です。
一方で、筋力、バランス能力、関節の柔軟性、痛みの有無といった「運動器」の機能は、法定の
健診項目には含まれていません。つまり、健診結果が「異常なし」であっても、転倒や腰痛につ
ながる体の機能低下が進んでいる可能性は、健診だけでは把握できないのです。
「運動器リスク」は自覚しにくい
運動器リスクの厄介な点は、本人が自覚しにくいことです。
筋力やバランス能力の低下は、階段でつまずく、片足立ちがしにくくなる、
以前より疲れやすくなるといった形で徐々に表れますが、多くの人は「年のせい」として受け流してしまいます。
痛みが出て初めて整形外科を受診するケースも多く、その時点ではすでに転倒や腰痛のリスクが高まっていることも珍しくありません。
特に高年齢労働者では、加齢による筋力低下やバランス能力の低下が進みやすく、令和 6 年の労働災害統計でも
60 歳代以上の死傷年千人率は 4.00 と、若年層より高い水準にあります。
健診で「異常なし」と判定された従業員であっても、運動器の機能面では転倒リスクを抱えているケー
スがあり得るということです。
見過ごされやすい理由
もう一つの理由は、企業側の労務管理の仕組みにあります。
定期健康診断は法定義務であるため多くの企業で確実に実施されていますが、
運動器機能の評価は義務ではないため、実施している企業は限られます。
結果として「健診は毎年やっているから安全管理は万全」という認識と、実際の転倒・腰痛リスクとの間に
ギャップが生まれやすいのです。
PRACT の視点:理学療法士だからこそ見える機能低下
理学療法士は、筋肉や関節の動き、姿勢、歩き方といった「体の動かし方」を専門的に評価する国家資格者です。PRACT では、企業に訪問し、従業員一人ひとりの体力・筋力・柔軟性・バランス・痛みを直接評価する
「運動器検診」を行っています。
血液検査や画像検査では見えない、動作の質やバランス能力の低下を、
実際の動きを見ながら評価できるのが理学療法士の専門性です。
健診で「異常なし」だった従業員の中にも、転倒リスクが高い方が一定数含まれているのが実情です。
運動器検診は、そうした「健診の網からこぼれるリスク」を可視化するための手段として位置づけられます。
まとめ
定期健康診断は疾病の早期発見に有効な仕組みですが、
筋力・バランス・柔軟性といった運動器機能は評価の対象外です。
健診結果が良好でも、転倒や腰痛のリスクが潜んでいる可能性があることを踏まえ、
運動器機能を評価する仕組みを別途取り入れることが、労働災害予防の観点からは有効といえます。
自社の従業員にどの程度の運動器リスクがあるのか把握したい場合は、
理学療法士による運動器検診の活用をご検討ください。
サービスの詳細はこちらでご案内しています。

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