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「転倒等リスク評価セルフチェック票」の使い方は?厚労省ツールを記入例つきで解説

「高年齢労働者の労災対策として、厚労省のセルフチェック票をダウンロードしてみたけれど、どう記入すればいいのか分からない」。
「安全衛生委員会で配布したいが、社員に説明できるほど中身を理解できていない」。

総務・労務のご担当者から、そんなお声を耳にすることがあります。

書式自体は無料で公開されているものの、身体機能テストと質問票、レーダーチャートが組み合わさった作りになっており、初めて見ると戸惑う方も少なくありません。

この記事では、厚生労働省が公表している「転倒等リスク評価セルフチェック票」について、
何を測るツールなのか、どういう手順で記入するのか、結果をどう読めばいいのかを順番に解説します。

目次

転倒等リスク評価セルフチェック票とは

まず、このツールがなぜ今注目されているのかを整理します。

厚生労働省が公表した令和6年の労働災害発生状況によると、
休業4日以上の死傷者数は135,718人で4年連続の増加となり、事故の型別では「転倒」が36,378人(全体の26.8%)で最も多くなっています。
また、雇用者全体に占める60歳以上の割合が19.1%であるのに対し、休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合は30.0%と、高年齢層に労災が偏っている実態も示されています。

こうした状況を背景に、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)第62条の2第2項に基づき、「高年齢者の労働災害防止のための指針」が2026年2月10日に公示され、2026年4月1日から適用されています。
この指針は、事業者に対して高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理を努力義務として求めるものです(罰則はありません)。

「転倒等リスク評価セルフチェック票」は、
この指針の周知資料の中で参考様式として添付されているツールのひとつです。
もともとは厚生労働省の調査研究事業の中で作成されたもので、身体機能の測定と質問票を組み合わせ、
労働者自身が転倒等のリスクに気づくことを目的としています。
厚生労働省や各都道府県労働局のウェブサイトからPDF形式で無料ダウンロードできます。
実施義務や様式の指定があるわけではなく、あくまで活用が推奨されているツールの一つという位置づけです。
自社での取り扱いや最新の様式については、厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

セルフチェック票の構成:「実際の体力」と「自分の思い込み」を比べる

このセルフチェック票の特徴は、客観的な身体機能の測定結果と、本人の主観的な自己認識を、あえて別々に測ったうえで見比べる構成になっている点です。
大きく3つのパートに分かれています。

I. 身体機能計測(5つのテスト)

  • ①2ステップテスト:できるだけ大きな歩幅で2歩進んだ距離を身長で割った値(歩行能力・筋力の指標)
  • ②座位ステッピングテスト:椅子に座った状態で、20秒間に左右のマークへ交互に足を乗せた回数(敏捷性の指標)
  • ③ファンクショナルリーチ:立った姿勢から、バランスを崩さずに腕をどれだけ前に伸ばせるか(動的バランスの指標)
  • ④閉眼片足立ち・⑤開眼片足立ち:目を閉じた状態/開けた状態で片足立ちを保持できる秒数(静的バランスの指標)

それぞれの実測値を、票に付属する評価表に当てはめて1〜5点で評価します。
具体的な換算表の数値は様式によって記載されているため、実施の際は厚生労働省が公開している最新のPDFをご確認ください。

II. 質問票(9問)

人混みで人をよけて歩けるか、とっさの反応は素早い方だと思うか、
片足立ちでどのくらい立っていられる自信があるかなど、本人が自分の体力をどう感じているかを9つの質問で尋ねます。
回答を点数化し、合計点を評価表に当てはめて1〜5点に変換します。

III. レーダーチャート

Iの身体機能計測の結果(黒字)と、IIの質問票の結果(赤字)を、同じレーダーチャート上に記入して線で結びます。
ここで「実際の体力」と「自分が思っている体力」のギャップを可視化するのが、このツール最大の狙いです。

記入方法:4つのステップ

実際に記入する際の流れは、次の4ステップで進めます。

ステップ1:5つの身体機能テストを実施する
安全な場所で①〜⑤のテストを行い、実測値(cm・回数・秒数)を記録します。
ファンクショナルリーチや片足立ちは転倒の危険を伴うため、壁際や、支えとなる人がそばにいる環境で行うことをおすすめします。

ステップ2:実測値を評価表に当てはめて点数化する
票に記載された評価表と実測値を照らし合わせ、各テストを1〜5点で評価します。

ステップ3:質問票に回答する
9つの質問にそれぞれ回答し、指定された方法で合算したうえで、評価表を使って1〜5点に変換します。

ステップ4:レーダーチャートに記入し、線で結ぶ
ステップ2の身体機能の点数を黒で、ステップ3の質問票の点数を赤でレーダーチャートに記入し、
それぞれ線で結びます。黒い枠と赤い枠、2つの五角形ができあがります。

結果の読み方:枠の大きさと「黒と赤のズレ」に注目する

記入が終わったら、次の3点をチェックします。

1. 黒枠(身体機能)の大きさ
枠が大きいほど転倒等のリスクは低いと考えられます。逆に枠が小さい項目、特に2点以下の項目がある場合は、その体力要素についてリスクが高い可能性があるとされています。

2. 赤枠(自己認識)の大きさ
黒枠と赤枠が近いほど、自分の体力を実態に近い形で把握できているといえます。

3. 黒枠と赤枠の位置関係
ここが最も重要なポイントです。

  • 黒枠が赤枠と同じか大きい場合:自分の体力を実態通り、あるいは慎重めに評価できている状態です。
  • 黒枠が赤枠より小さい場合:自分が思っているほど体力がない、いわば「過信」の状態です。
    とっさの場面で体が思うように反応しない可能性があり、より注意が必要とされています。

このツールは、点数の良し悪しで合否を判定するものではありません。
「自分の体力を正しく把握できているか」に気づいてもらうことが本来の目的です。

個人としては、黒枠が小さい項目や、黒枠が赤枠を下回っている項目について、
日頃の運動習慣や職場での行動の見直しにつなげることが期待されます。

職場全体で実施した場合は、事業場としての傾向を集計し、安全衛生委員会での審議や、
通路の整理整頓・段差の解消といった職場環境の改善につなげることが、指針でも触れられている活用の考え方です。

なお、実施にあたっては、労働者の心身の状態に関する情報の取り扱いに配慮する必要がある点にも留意が必要です。

PRACTの視点:セルフチェックの「その先」を理学療法士が支える

セルフチェック票は、誰でも無料で使える優れた気づきのツールです。一方で、自己測定には限界もあります。
ファンクショナルリーチや片足立ちは、フォームが崩れると実測値が変わってしまいますし、
そもそも一人では正確に測りにくいテストも含まれています。
また、結果を見て「枠が小さい」と分かっても、「では具体的に何をすればいいのか」まで踏み込んで書かれているわけではありません。

PRACTでは、理学療法士が札幌の企業を訪問し、「おとなの運動器検診」として体力・筋力・柔軟性・バランス・痛みを専門的な手技で評価しています。
理学療法士は、体の動きを評価すること自体を専門とする職種であり、
セルフチェック票が扱うような歩行能力・敏捷性・バランスといった要素を、より精度高く測定できます。

さらに重要なのは、その先です。
オンサイトPT(理学療法士の企業訪問による運動指導)を組み合わせることで、「バランス能力の枠が小さい」という
結果が出た方に対して、その場で具体的な運動指導やセルフケアの提案までつなげることができます。
セルフチェック票が「気づき」を与えるツールだとすれば、理学療法士による評価と指導は、その気づきを「行動」に変える役割を担っています。

まとめ

「転倒等リスク評価セルフチェック票」は、
身体機能の実測値と本人の自己認識をレーダーチャートで見比べることで、
転倒等のリスクへの気づきを促す厚生労働省公表のツールです。
2026年4月から適用されている「高年齢者の労働災害防止のための指針」の周知資料にも含まれており、
高年齢労働者への対応を検討する際の入り口として活用しやすいものといえます。

ただし、このセルフチェックだけでは測定の精度や、結果を受けた後の具体策まではカバーしきれません。
転倒災害は労働災害全体の中でも件数が最も多い型であり、
特に高年齢層で骨折等の重症化リスクが高いことを踏まえると、
気づきを行動につなげる仕組みまで用意しておくことが望ましいといえます。

札幌で、セルフチェックの「その先」まで支援する健康経営を始めるなら

PRACTでは、理学療法士による「おとなの運動器検診」オンサイトPTのパッケージで、
貴社の転倒等リスク評価や労災予防をサポートします。
セルフチェック票を実施済みの企業様からの、専門職によるフォローアップのご相談も承っています。

サービス内容の詳細はこちら

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この記事を書いた人

保有資格:理学療法士(運動器認定)、呼吸療法認定士、NSCA-CPT

札幌市・江別市を拠点に、企業向け運動器検診サービス「PRACT」を運営。
理学療法士が企業を直接訪問し、働く人の身体機能(筋力・柔軟性・バランス・
可動域等)を評価するリスクアセスメントを通じて、労災予防と健康経営を
支援している。

札幌市内の産業保健センターにて相談員も行っている

PRACTを約3年かけて自身で立ち上げ、評価バッテリーの設計からWebサイト構築まで一貫して手がけている。

健康から始まる街づくりを目指している

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